いくら燃焼効率が優れている高性能な薪ストーブを設置しても、煙突の性能や煙突の設置方法によってはその性能が発揮されずもったいない事になってしまうこともあります。これから薪ストーブの購入を考えていらっしゃる方に向けて、正しい煙突の知識を持ってもらえるように、今回はそんな煙突の事について書きたいと思います。
煙突の働きと種類
煙突はステンレス製の筒で、簡単に言ってしまえば煙の通り道なのですが、その煙突はどのようなものがあり、どのような仕組みで煙が排出されているのでしょうか。
煙突はドラフトを発生させる
煙突は暖かい空気が上昇しようとする原理を利用して煙を外に排出しています。(ドラフト)ストーブから出た高温の煙と外気の冷たい空気の温度差が大きければ大きいほど、煙が上昇しようとする力は強くなります。煙を外に吸い出す強いドラフトがあってこそ効率のいい燃焼が生み出されます。
ドラフトを安定させるためには
強く安定したドラフトを生み出すには、煙突の長さを5m以上にする必要があります。ドラフトは、ストーブの排気部分(煙突の接続部)と煙突先端との温度差、煙突の長さによって比例して強くなっていきます。一方で煙突の曲がりや水平方向の煙突の長さを長くするとドラフトは弱くなってしまいます。なるべく曲がりを少なくし、水平方向の長さも短くすることが大切です。
煙突の種類
煙突には、いくつか種類があり、安定した燃焼と安全性のために施工条件によって使い分ける必要があります。
安全かつ効率を高めるダブル煙突
二層構造になっていて、アウターとインナーの空間に断熱材を詰めた二重煙突。高価ですが、断熱性と保温効果が高く、それによって強いドラフトを生み出し、安定した燃焼を可能にします。また、安全性についても、煙道火災や低温火災のリスクが軽減できるので安心です。
排熱を利用できるシングル煙突
室内用の煙突として使われることが多い一重煙突。断熱性と保温効果で劣りますが、煙突からの熱放射が期待できることと、構造がシンプルなため低価格な煙突です。
メンテナンスが可能な窓付き煙突
煙突内の様子を見たり煙突掃除を行うための窓がついている煙突。主に曲部に装着します。安定した燃焼のために不可欠な点検と煙突掃除を簡単に行える便利な部材です。
雪国福井での煙突設置のポイント
雪が多く降る福井では、煙突の設置にも雪対策が必要になります。対策なしだと雪が屋根をずり落ちる際に煙突を痛め雨漏りなどの原因となることもあります。それを避けるため、屋根から煙突を抜く場合には煙道囲いという施工がお勧めです。煙道囲いとは、屋根ら突き抜けた煙突部分をを木材と外壁で囲んで煙突を守る施工方法です。また、壁から煙突を抜く場合には屋根の軒先側でなく“けらば側”から煙突を通す施工がお勧めです。
危険な煙道火災と低温炭化
煙突は誤った施工や定期点検を怠ると、煙道火災や低温炭化が原因で火災を引き起こす可能性があります。そうならないために、安全な施工と定期点検がとても重要です。
煙道火災
煙道火災とは、煙突の中でクレオソートという可燃性の物質に引火する事で起きる火災の事です。クレオソートに引火すると爆発的な勢いで燃え上がり一気に煙突が真っ赤になる1000度近い温度になり大変危険です。
クレオソートとは煙突内壁に付着した湿っぽいススのことです。煙突が煙突内の煙は上昇してい時に煙突壁を挟んで冷たい外気によって冷まされていきます。煙が冷えるとドラフトが弱まり、結露して煙突内壁に付着しやすくなります。
原因としては、乾ききっていない薪の使用や、ストーブの燃焼温度が低い状態で使用したり、外にシングル煙突を使用した場合など複数の要因が重なり起こります。
対策としては、外気に触れる部分は特にダブル煙突を使用すること、必ず毎年煙突内の点検をすること、薪の含水率を水分計で計測し18%以下のものを使用する事などです。
低温炭化
低温炭化とは、可燃壁の表面や、壁内の木材がストーブや煙突からの放射熱を受けて時間をかけて炭化していく現象です。木材は100度から150度の温度で長時間さらされると内部で蓄熱がおこり、少しずつ炭化が進みます。炭化した木材は200度以下で着火してしまうので非常に危険です。また厄介なのはこの現象が見えない壁の中で進んでしまう事です。防ぐには、ダブル煙突の使用や煙突と壁の間に断熱版を使用するなど、壁側への断熱対策がとても大切になります。弊社ではストーブ使用中に壁の温度が65度以上にならないような施工を行っています。
安心かつ快適な薪ストーブライフを過ごしてもらうために
タニグチ商会では、ここでご紹介させていただいた煙突の重要性を十分に理解し、お客様が安心して楽しい薪ストーブライフを過ごしてもらえるよう、安全第一の施工を心がけています。また、煙突の点検については、もちろん弊社でもご依頼いただけますが、冬季は毎日お使いいただくものなので、些細な変化にも対応できるよう、なるべくお客様ご自身でも安全かつ容易に点検を行って頂けるような煙突の取り付けを考え、施工を行っております。