薪ストーブの正しい燃焼のためには、煙突の設置やメンテナンスも必要ですが、そもそもの燃料となる“薪”にもいくつか条件があり、その条件を満たした良質な薪を使用することで本来の薪ストーブの性能を発揮できます。今回はその“薪”の種類や選び方について書きたいと思います。
薪のもとになる樹木の種類
地球上には約8000種の樹木があって、そのうち30%の2200種の樹木が日本に自生しているそうです。これほど多彩な樹木があるなんて、日本は樹木にとても恵まれた薪ストーブライフにふさわしい国だと思います。薪のもととなる樹木には大きく分けると「落葉」「常緑」「針葉」「広葉」の4種類があります。それぞれの特徴と“薪”にふさわしいものを詳しくまとめてみました。
常緑樹
1年中緑の葉を付けている樹木。ただし同じ葉が何年も枝に付いているのではなく、新しい葉が芽を出し育った後に、古い葉は枯れ落ちて置き換わる。
落葉樹
春に新しい葉が芽を出し、秋に紅葉し、冬には落葉する樹木。
針葉樹
葉
固く細い針状、あるいはうろこ状の葉のものが多い
幹の形
円錐形あるいは傘形で、木のてっぺんがとがった形状のものが多い
樹木の高さ
高さ10m以上の高木となるものが多い
広葉樹
葉
平らで広い葉を持つもの
樹形
木のてっぺんが丸みを帯びた形状のもの
樹高
高さ10m以上の高木から、1m以下の小低木まで、幅が広い
薪にふさわしい樹木は?
◎ 落葉広葉樹 | カシノキ、シラカバ、ブナ、クヌギ、ケヤキ、コナラ |
---|---|
〇 常緑広葉樹 | クスノキ、アカガシ、シラカシ、アラカシ、キンモクセイ、ヤブツバキ |
✕ 落葉針葉樹 | イチョウ、カラマツ、メタセコイヤ |
✕ 常緑針葉樹 | ヒノキ、クロマツ、アカマツ、ヒマラヤスギ、スギ、モミ |
薪選びに重要な4つのポイント
良質な薪の条件は次の4つ。この4つのポイントを踏まえて焚く薪を選んでください。
良質な“薪”条件その① 乾燥していること
薪がしっかり乾燥しているかという事は薪選びにおいて最も大事な事の1つです。薪の端でなく、中心部分の水分量が18%以下になっている事が乾燥の条件です。水分計を使いしっかりチェックしましょう。効率よく乾燥させるには、雨が当たらず風通しの良いところに置くことです。しかし、なかなかそんなに条件のいい場所はなく、実際は家の外壁に沿って積み上げている方も多いと思います。そんな場合には2シーズン程度置くと、しっかり乾燥できると思います。
未乾燥の薪を焚くと、本来得られる熱量の70%以下になると言われています。未乾燥の薪は暖かくないだけでなく煙突内にも悪さをします。クレオソートの発生です。燃焼温度が上がりきらないので排気自体も冷めるのが早く、煙突内で結露を起こしクレオソートが発生します。やがて煙突が詰まりかけて、最悪の場合煙道火災となります。
良質な“薪”条件その② 広葉樹であること
薪には広葉樹が最適です。広葉樹は成長がゆっくりで年輪が細かい樹木です。ゆっくり成長しているので木の密度も高く、重量があります。要するにそれだけエネルギーが詰まっているという事です。広葉樹は燃え始めるとゆっくりと時間をかけて燃え、多くの熾火が残ります。薪ストーブにとっては、この熾火が非常に重要で、この熾火が長時間薪ストーブ本体を暖めながら強いドラフトを発生させてくれます。
針葉樹が不向きな理由
針葉樹は広葉樹に比べると成長が早く密度が低い樹木です。また冬の間も葉を残しながら厳しい寒さを耐え抜くために針葉樹の幹には樹脂が多く含まれています。その針葉樹を薪ストーブで燃やすと、燃焼温度は1000℃以上の高温になります。1000℃以上の高温は薪ストーブのガスケット類や鋳物を痛めてしまいます。
厄介者の針葉樹ですが、焚き付け時にはとても重宝します。まだ温度が低く強いドラフトが起きていないときには、密度の高い広葉樹は火が付きにくいので、この針葉樹を少量燃やして煙突が暖まってから広葉樹に切り替えていくようにするとスムーズな着火が出来ます。
針葉樹も使えるストーブ
薪ストーブの中には針葉樹を焚いも大丈夫なものもあります。それはウッドボックス方式と言われる方式で燃焼するストーブです。炉内の気密性を高めながら、燃焼用空気を熱交換部を通過することで極限まで熱してから燃焼室に送ることで、低い温度での煙の燃焼が可能です。そのため針葉樹でも温度を抑えながら完全燃焼させることが出来ます。
良質な“薪”条件その③ 長すぎないこと
薪は長いものだと、端と中心部とで燃え方に差がでてしまい、1度に多くの熾火をためることが出来ません。つまり薪の端が燃え終わって灰になる頃には中心部やその反対の端はまだ燃え始めているという状態になってしまって、「灰」と「熾火」と「燃焼中の薪」の3つの状態が同時に起こります。しかし、短い薪であれば、端にひがついてから中心部に燃え広がるのが早いので、全体が同時に燃えて1度に熾火をたくさんためることが出来るため、炉内の温度を高いままに保てます。
良質な“薪”条件その④ 秋から冬に伐採したもの
薪は秋から冬に伐採したものが良質な薪になります。それには樹木の成長に理由があります。樹木は秋から冬の間は、道管が狭まり成長が一旦止まります。そして、春から夏の間は、道管が開いて地中の水を吸い上げて成長期になります。そのため、成長期に伐採すれば幹にたくさんの水が含まれているので、腐りやすく虫も入りやすかったり、道管が開いているので密度も低く火持ちが悪くなります。一方で秋から冬に伐採したものは水分も少なく、道管が狭まり密度が高いので日持ちがいい良質な薪になります。
薪選びを大切に
誤った薪選びは暖かくないどころか、薪ストーブを痛めしてまうこともあります。ご自分で薪の調達をされている方は特に気を付けていただきたいと思います。ここに書かせて頂いたことが薪ストーブユーザー様にとって少しでも役に立てばと思います。正しい薪選びで快適な薪ストーブライフをお過ごしください。